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セキュリティ対策

生成AIの情報漏洩対策は禁止より権限整理|過剰共有を防ぐ中小企業の点検手順

生成AIの情報漏洩対策は禁止より権限整理|過剰共有を防ぐ中小企業の点検手順

生成AIで本当に怖いのは「外部流出」より社内での「過剰共有」である理由

生成AIの導入にあたり、多くの企業が警戒するのはプロンプト(指示文)を通じた「社外への情報漏洩」です。しかし、実際に社内データと連携するAIツールを運用する際、より注意すべき事故は社内における「過剰共有」です。

過去に誤って全社員へ共有設定されたまま放置されていたファイルが、AIの検索機能によって意図せず他の社員に閲覧される現象を指します。外部流出の阻止だけでなく、社内でのアクセス制限不備が引き起こすデータ露出への対策が欠かせません。

AIは権限のあるデータを忠実に探すだけ

Microsoft 365 Copilotなどの法人向けAIツールは、ユーザー自身がアクセス権を持つデータのみを参照して回答を生成する仕組みを持っています。AIが独断でアクセス権のない非公開データを閲覧することはありません。

問題となるのは、社員が過去に作成したファイルの共有設定です。例えば、社内共有フォルダの奥深くに置かれた「リンクを知っている全員」や「社内全員」にアクセス権限が開かれたファイルが存在する場合、AIはそのデータを正常な参照対象として処理します。

「誰も見ないから放置」されていたファイルが顕在化するリスク

従来のファイルサーバーでは、深い階層にあるファイルや複雑な名称の文書を社員が手動で探し出すことは容易ではありませんでした。そのため、設定が不適切なファイルが存在しても実害が生じにくい状況にありました。

しかし、自然言語による曖昧な質問から目的の情報を抽出するセマンティックインデックス機能により、状況は変化します。役員報酬の推移や人事評価の基準といった機密情報が、単なる検索クエリによって一瞬で画面上に提示されるリスクが生じます。

特に社内での過剰共有において見落とされがちなのが、平文(暗号化されていない生のデータ)で保管・やりとりされている以下の情報です。

  • SharePointやGoogle Drive上に保存されたパスワードリスト
  • 社員間のメールでやり取りされているツールのログインIDやパスワード

実際、Excelでパスワード一覧表を作成し、そのまま共有ファイルに保存している会社は少なくありません。これまでは目立たず問題にならなかった運用であっても、生成AIの導入によって予期せぬ露出リスクに変わります。

AIに特定のフォルダやメールを読みにいかせる設定を有効にすると、こうしたやりとりまでAIが参照・抽出できるようになります。結果として、検索を通じて認証情報が社内へ露出する事態につながります。

セキュリティ対策やガイドラインを作成するうえで、最も大切なのは日々の運用ルールです。SharePointやGoogle Driveを過信せず、セキュリティ関連や個人情報などはローカルサーバーなどで保存することを推奨しています。

生成AIを「全面禁止」にした企業が陥るシャドーIT化の失敗構造

生成AIのリスクを懸念するあまり、社内での利用を全面的に禁止する判断を下す企業は少なくありません。しかし、現場の業務効率化ニーズを無視した一律の禁止措置は、かえって別のセキュリティリスクを呼び込みます。

会社に無断で個人の無料AIツールや私有スマートフォンを業務に利用する、いわゆるシャドーIT化の進行です。利用禁止の徹底は水面下での個人利用を促し、企業によるログの監査や入力データの制御を不能にする要因となります。

ルールの厳格化が野良AI利用を加速させる

業務量の増加に直面する現場では、文章作成やデータ処理の効率を上げるためにAIの活用を強く望んでいます。会社側が正当な利用環境を提供しない場合、社員は個人の判断で使い勝手の良い外部サービスに頼るようになります。

個人アカウントで利用される無料サービスでは、入力したデータがAIモデルの再学習に使用される可能性があります。厳格すぎるルール設定が、結果として会社が把握できない領域でのデータ流出リスクを増大させる結果に繋がります。

対策の優先順位を「社員の監視」から「権限の整理」へ変える

AI対策の第一歩は、社員の監視や規制を強化することではありません。社員が安全に利用できる法人向け環境を整え、万が一AIが検索を行っても問題が起きないように社内データのアクセス権限を整理することです。

「使わせない」という抑止策から、「正しい権限管理のもとで安全に使わせる」という推進策へ方針転換を行う必要があります。アクセス権限が適切に設定されていれば、安全な利用環境のもとで業務効率化を推進できます。

入力データのリスクを抑える行政ガイドラインの要点とツール選定の基準

外部ツールへの入力によるデータ流出を防ぐためには、行政機関が発出しているガイドラインの要点を正しく理解し、適切なツール選定を行う必要があります。

個人情報保護委員会は、令和5年(2023年)6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。個人データを含むプロンプトを入力する際は、あらかじめ特定された利用目的の達成に必要な範囲内で行うことが求められています。

個人情報保護委員会が定める入力データの制限要件

個人情報保護委員会の注意喚起では、プロンプトとして入力されたデータが生成AIサービス提供事業者によって再利用・機械学習される場合、個人データの「第三者提供」に該当し得る象が示されています。

この場合、あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを生成AIへ入力することは原則として認められません。また、提供事業者に対しては、配慮が必要な個人情報を原則として取得しないことなどが要請されています。

再学習されない法人向けプランの見極め方

入力データの流出リスクを低減させるためには、入力内容がAIモデルのトレーニングに再利用されない仕様のサービスを選ぶことが不可欠です。選定時には以下の条件を満たしているか確認します。

  • 入力データがモデルの再学習に利用されないオプトアウト仕様または規約になっているか
  • 自社の組織データが外部の利用者や第三者と共有されない保護領域で管理されているか
  • 管理者側でアクセスログの取得やユーザー管理を一元的に行えるか

無料版の生成AIサービスでは、初期設定で入力データが学習利用されるケースが多く存在します。企業で導入する際は、明確にデータの非再利用が明記された法人向け有料プランやエンタープライズ領域のサービスを選択するのが基本的な基準となります。

M365 Copilot導入前に実施すべき社内データ権限の棚卸し4ステップ

Microsoft 365 Copilotなどの高度な社内検索型AIを導入する際は、事前に社内ストレージの権限設定を棚卸しすることが推奨されています。過剰共有による露出トラブルを防ぐための具体的な4つのステップを解説します。

Microsoftが公表する導入ガイドにおいても、過剰共有の修復が最優先事項として挙げられています。適切なアクセス権の設定は、AIを安全に運用するための前提条件と言えます。

手順1:最重要機密データの所在確認と分類

最初に行うべきは、社内に存在するデータの重要度分類です。漏洩した際に経営へ重大な影響を与えるファイルを特定し、保管場所を把握します。

  1. 役員会議録、役員報酬一覧、株主関連の書類
  2. 人事評価シート、給料情報、従業員の個人情報
  3. 未発表の事業計画、財務諸表、取引先の機密情報

これらの重要ファイルが、一般的な業務ファイルと同じフォルダや誰でもアクセスできる場所に混在していないか点検します。

手順2:広範囲共有(「全員」設定)の全社一括見直し

次に、SharePointやOneDriveなどのクラウドストレージにおいて、「社内全員」や「リンクを知っている全員」に設定されている共有リンクを全社的に抽出します。

この2番目の手順で特に重要となるのが、フォルダ整理と命名規則の見直しです。過去のプロジェクトで一時的に作成された共有リンクや、利便性を優先して権限を広げたまま放置されているフォルダが点検対象となります。

適切なフォルダ整理を実行し、わかりやすい命名規則を適用したうえで、不要な広範囲共有を一括で解除してアクセス範囲を絞り込みます。

手順3:最小権限の原則に基づくアクセス領域の再設計

広範囲共有を解除した後は、業務上の必要性に応じて適切なアクセス権限を再設定します。多くの企業では、誰がどのデータのアクセス権を管理すべきかが決まっておらず、責任の所在が曖昧なまま運用されているケースが少なくありません。

「アクセス権限は必要最小限の範囲に留める」という原則に従い、管理責任を明確にしたうえで、組織階層や部署ごとにフォルダ構造を再構築します。

広範囲に共有されるべきフォルダには最初から機密ファイルを置かないルールを徹底し、重要データは特定の役職者のみがアクセスできる専用領域へ隔離します。

自社内での権限点検やガイドライン策定に不安がある場合は、法人向けAI導入・権限設計の伴走支援などのサポートを活用するのも手です。

手順4:定期的なアクセス権限の監査プロセスの構築

権限の整理は一度行って終わりではありません。人事異動や組織改編のタイミングで新たな誤設定が発生する可能性があるため、定期的な点検プロセスを社内運用に組み込みます。

月次や半期ごとにアクセス権限の状況を確認する担当者を定め、監査ログをチェックする体制を整えます。あわせて、単に抽象的なAI利用ガイドラインを配布するだけでなく、日常業務で生じやすいリスクを具体的に伝えることが不可欠です。

「パスワードリストの保管場所」や「メールでのID・パスワード送受信」といった実例を挙げ、利用者側へのヒヤリハットとして周知・説明を行う運用を組み込むことが、持続可能なセキュリティ維持に繋がります。

状況に応じた次のアクション

生成AIを安全に活用するためには、自社の立場や役割に応じた着手ポイントを押さえることが重要です。一気に全てを変更しようとせず、実行可能な対応から段階的に進めてください。

立ち位置・役割

次に取るべきアクション

経営者・役員(投資とリスクの判断を行う立場)

自社の主要クラウドストレージで「社内全員共有」になっている機密ファイルがないか、管理部門へ点検指示を出しリスクの全体像を把握する。

総務・管理部門・実務担当者(運用の実務を担う立場)

役員会議録や人事データなど最重要フォルダのアクセス権限を点検し、不要な広範囲共有リンクを解除する実務作業から着手する。

専門家への相談を検討したい場合

社内データの権限整理や、自社の運用に合わせた安全なAI利用環境の構築について、専門的なアドバイスや伴走支援の利用を検討する。

社内データの権限点検やAI利用環境の構築についてお悩みの場合は、生成AIの情報漏洩対策や権限点検について相談するよりお問い合わせいただけます。自社の状況に応じた現実的な対応策をご提案します。

参考にした一次情報